新しい法曹養成機関としてスタートした法科大学院も,設立から9年が経とうしています。

法科大学院については,ご存じのとおり様々な問題が指摘されており,制度自体の存廃についても大いに議論のあるところです。

現に法曹養成制度検討会議では,法科大学院のあり方についてかなり激しい議論がされているところです。また,千葉県弁護士会は,法科大学院修了を司法試験の受験資格から外すべきである(つまり法科大学院の修了生でなくても誰でも自由に受験できるようにすべきである,ということです。)との声明を決議して話題を呼びました。

法科大学院の今後のあり方,さらにはその存続は重大な岐路にあるといえ,法科大学院には大きな変革が求められていると思います。

高名な先生方が議論している分野ではありますが,この点について当事者の声を付け加えることは決して無益なことではないと思います。

ここでは,法科大学院の教育を経験し,また,実務に就いている者の一つの声として,これからの法律家を養成するために,これからの法科大学院に求めることについて,思いつくままに私の考えを並べてみようと思います。

1 具体的事例に対して,解決策を書面化する練習をカリキュラムに取り入れる

こう書くと「司法試験対策か!」と思われるかも知れません。しかし,司法試験でも実務でも,具体的な事例に対して解決策を書面で示すということの重要性はかわりありません。

法律実務家として必須のスキルを訓練することで,同時に司法試験の対策も実現できるというのは,まさに法科大学院と司法試験との関係において理想的といえるのではないでしょうか。もちろん,学生に作成させた書面を添削し指導することは,双方向の授業を成立させる上でも必要だと思います。

2 附属法律事務所を設立して,学生に実務で必要な知識や能力のイメージをもってもらう

畳水練では1mも泳げるようにはなりません。ドーバー海峡を渡る必要はありませんが,プールくらいにはつかっておくべきではないでしょうか。

法律実務家の養成機関である以上,学生が必要とされる知識や能力のイメージを持ってもらうことは非常に重要です。

もちろん,実務教育は,あくまで司法修習やその後のOJTを基本とすべきではありますが,実務のイメージをもつことは日々の学習への強力な動機付けとなります。

また,実務においてどの程度の知識が必要であるかについてもイメージが持てれば,過度の知識偏重への戒めにもなると思います。

ですから,法科大学院においては,医学部が大学附属病院をもつように,附属法律事務所を作って頂きたいと思います。できれば,すべての法科大学院においてです。すでに設立をしたり,あるいはそれに向けて動いている法科大学院がありますが,非常に意義深い動きであると思います。

3 受験生や司法修習生の立場に立って,人気の回復を図る

平成24年,適性試験つまり法科大学院を経由して法曹になろうとする志願者の数は,6457人となりました。これに対し,法科大学院開始直前(平成15年)の旧司法試験の志願者数は,5万166人でした。なお,昭和30年の旧司法試験の志願者数は6347人であり,改革により戦後の焼け野原になったとまではいいませんが,これは危機的状況にあるという他ありません。

この不人気の理由は,いろいろな原因が指摘されています(たとえば二弁フロンティア2012年12月号)ので,ここではいちいち指摘しません。

法科大学院サイドとしては,その原因を司法試験の合格率に求めているようです。しかし,受験科目が山のようにあり,合格率がはるかに低い司法試験予備試験の方が,はるかに多くの受験生を集めています。また,記念受験が相当多くあったとはいえ,合格率が非常に低かった旧司法試験の志願者数は,これよりはるかに多かったのです。このことからすれば,原因は他にもあるといえるのではないでしょうか。

法科大学院においては,例えば,上記の附属法律事務所の運営を通じて自ら率先して具体的な需要の開拓に取り組んで成果を公表し,あるいは司法修習の給費制復活のための運動に取り組むなど,法曹志願者が安心して勉強に励めるような環境整備のために,一層の努力が求められていると思います。

もちろん,これらは法科大学院のみならず法曹養成全体の問題ですから,我々若手法律家としても協力をしていくことが必要だと思います。

平成25年3月18日
深澤 諭史(弁護士 第二東京弁護士会)
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