先日、これから会設立記念シンポジウム「組織内弁護士の実情から見る法律家の役割と意義」のパネリストの方々との事前打ち合わせを行った。私が会社を退職して法科大学院に入学した時から数えて、今年の3月ではや9年。今回のシンポのテーマには以前から興味を持っていて、シンポの司会を担当することをとても楽しみにしている。

日本では、弁護士の仕事の中心は、裁判等を通じて紛争や事件を解決することと考える人が多かったように思う。東京や大阪の企業法務専門かつ訴訟をやらない弁護士や、組織内弁護士(訴訟以外の業務を中心としている方が多いと認識している)を除き、弁護士の多くはそう考えていた(今もそう考える人は多くいる。)ように思うし、一般の人の弁護士像も、紛争(事件)になった場合に相談に乗ってもらい、裁判や交渉を通じてその解決を行う人というところだったのではないか。

紛争解決の仕事が、人権の擁護や社会の正義の実現のためになくてはならない仕事であり、多くの困難に直面した人を助けてきたこと、さらに紛争解決を通じて先輩法曹の方々が積み重ねてきたものの重みは、法科大学院や修習で学んだ時にも、日々実務に取り組むなかでも実感してきたつもりだ。

一方、海外に目を向けてみると、アジアでは、弁護士の仕事の捉え方として、日本と近い考え方をする国が比較的多いように思う。これに対し、欧米では、弁護士は紛争の解決も行うが、それ以外、たとえば、紛争を事前に防止するための助言や、法律の制定、そして政府や企業、NGOの中での法律判断や、場合によって法律が関わるが法律だけにとどまらない重要な判断を担っており、こうした仕事も紛争解決と同等に(場合によってそれ以上に)重要だと捉えられているように感じる。

紛争解決の場面で法は大きく機能するが、法が機能する場面は紛争解決の場面だけではない。社会の中では、多くの人や組織が法を前提とし、法に関係する判断を多数行っている。これらの判断は多くの場合、法以外の要素とも複雑に絡み合っていて、場合にもよるがその判断は必ずしも容易ではない。

こうした判断や、判断のための助言を法を理論、実務の両面から深く学び、現場で法を駆使した経験を持ち、独立性と倫理を備え、かつ自分とは異なる意見もきちんと受け止めるコミュニケーション能力を持った弁護士が担うことができるのであれば、それに越したことはないと思う。ただし、こうした役割を担うためには資格があればそれでよいというものではなくて、それだけの能力を持ち、かつ信頼を得ていなければならないだろう。 

私は、今後、弁護士、法律家の役割がどう変わるのか、変わらないかに、これからの組織内弁護士のあり方がどうなっていくかが、かなり大きく影響するのではないかと考えている。法科大学院1期生が法律家となって、4、5年。今から5年後、10年後に、法律家は社会からどのような信頼を得て、どのような役割を果たしているだろうか。

今回のシンポでは、組織内弁護士の役割や意義について議論をするなかで、弁護士の本質や、これからの法律家の役割と意義についてもう一度考えてみることを予定している。パネリストは、このテーマを議論するのに申し分のない方々と自負している。特に司法修習生や法科大学院生、若手法律家の方々の多数のご参加をお待ちしている。

乞うご期待!

弁護士 鈴木 幹太